「風立ちぬ」

 

飛行機の残骸の写真 をアップした日の夕方、
かみさんと娘に誘われて、飛行機を作った男の映画を見てきた。

宮崎駿の新作「風立ちぬ」である。


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この映画に対する評価は賛否相半ばするようだが、個人的には
いい映画だと思った。



ストーリは単純、ゼロ戦の設計者堀越二郎堀辰雄の小説の
ヒロイン菜穂子の恋物語である。
もちろん架空のお話だが、二人は関東大震災の中で出会い、
軽井沢で再開して恋に落ちる。


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時代は昭和10年前後。
堀越二郎は戦闘機の設計に情熱を傾け、菜穂子は肺を病みながらも
懸命に生きようとしている。


ここには戦争の影や天災による生死はほとんど描かれない。
堀越を美化しすぎだとか、宮崎の飛行機オタクぶりがですぎだとか、
ロリコン趣味だとか、否定的な評価がでている。
それらの見方はたぶん表面的には当たっている。
しかし宮崎はそんな批評が出るのを承知でこの映画を作った。


宮崎は基本的にファンタジー作家である。
困難な状況の中でこそ、美しいもの、夢、希望、愛は輝く。

宮崎は大天災と国の滅亡が続いたこの時代をあえて作品の舞台に選び、
その中で困難に立ち向かい、愛を貫く人間の姿こそ究極の
ファンタジー、と考えたに違いない。

そして三陸地震原発事故に立ちすくみ、立ちあがり切れない
この時代に勇気をあたえるためにこの映画を作ったのだろう。


その狙いがどこまで成功したかは分からない。。

計算尺を手に、四六時中設計図とにらめっこしている堀越の姿は
エンジニアである私には違和感なく受け入れられたが、一般の観客には
ピンとこなかったのかもしれないし、退屈な描写だったのかもしれない。


それでも映像は細やかで美しく、ストーリ展開も無駄が無い。
夢と現実の行き来の描写も素晴らしく、宮崎映画の到達点と言っていいだろう。



最後に個人的なことを付け加えると、堀越は小学時代の我がヒーローだったし、
堀辰夫の小説は中学の頃の愛読書だった。

映画のキャプションに「堀越二郎堀辰雄に敬意をこめて」とあるのを見て、
宮崎と同じ時代を生きてきたのだと、心が震えた。