写真集 REQUIEM(レクイエム) 集英社(1997)


 1950年代から1975年までの間に、ベトナム周辺の戦場で135名のカメラマンが死亡または行方不明となった。その中にはロバートキャパやラリーバローズのような高名なフォトジャーナリスト、沢田教一や嶋元啓三郎などの日本人カメラマンがいた。そして砲弾の向こう側にも多数の従軍カメラマンがいた。
 この本は戦場からかろうじて生還したカメラマンが、戦場に散った同業者の残した写真を収集し、レクイエムとして捧げたものである。

 戦争初期の頃、彼らは戦場だけでなくインドシナの湿潤でやさしい風景や人の姿に心を奪われカメラを向けていた。
(写真1)エヴェレット ディクシー リース(1950年)
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1960年代半ばアメリカが本格参戦する頃になると、写真は死と隣り合わせのヒリヒリとした空気を伝え始める。周囲の密林や潅木に潜む敵と対峙する恐怖。デルタやジャングルの中で泥水に浸かり、這いずり回り、逃げ惑う。
       (写真2)アンリ ユエ(1966)  田んぼのあぜ道に身を隠す兵士
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       (写真3)デーナ ストーン(1966)
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       (写真4)アンリ ユエ (1967) 戦死者を回収しようと匍匐前進する兵士
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そして膨大な血と死。
       (写真5)ラリー バローズ(1965) ヤンキーパパ13号同乗記
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       (写真6)オリバー ヌーナン(1969) 救出を待つ負傷兵
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 多くの無名の若者がカメラを抱えて戦場に向かった。ピューリッツァー賞をものにした若者もいれば、戦場に赴く前に地雷に倒れたものもいた。
          (写真7) 沢田教一 安全への逃避
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 戦場に向かって彼らを駆り立てたものは何か。
今ではすっかり忘れ去れた何かをこの本は思い出させてくれる。
そして彼らは確かに戦場の真実を写し取った。