佐々木譲「ワシントン封印工作」

 

佐々木譲の本はどれをとってもはずれということが無い。
「ワシントン封印工作」は1997年に出た古い本だが、
期待に違わず、読ませる。
この二~三日は眠い目をこすりながら、おそくまで読みふけった。

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舞台は日米開戦直前のワシントン。
中国アジアの権益をめぐって日米は鋭く対立しており、
日米戦争の瀬戸際にある。

アジアで泥沼の戦争を続ける日本は、大国米国との戦争は避けたい。
米国もドイツの脅威が増しているなか、太平洋側に回せる戦力は少ない。
戦争回避は双方の利害にかなうものなのだが、交渉は遅々として進まない。

日本軍撤退を求める米国は石油禁輸や米国資産凍結と、日本に対する圧力を強めている。
同時にアジアにおける日本の一定の利権を認める内容の交渉も進んでいるが、
軍部は譲歩を嫌い、かえって侵略を強めていく。
そうしてワシントンでの交渉は次々に挫折していく。


この本は固いだけの本ではない。
米側スパイとして大使館に送り込まれる女性を間にして、日本人留学生と米国務省幹部の恋のもつれが展開される。
近年明らかになってきた歴史的事実がほどよくミックスされ、良質の小説になっている。