真崎守の「わたしの手塚治虫体験(一)」

 
近所の図書館の入り口に「自由にお持ちください」のコーナがある。
ここに並んでいる本や雑誌のことを除籍資料というのだそうだ。

先日、そのコーナーで真崎守の「わたしの手塚治虫体験(一)」を入手した。

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奥付を見ると1990年の出版とあるから20年前の本である。
紙は黄色く変色しているが、本はそれほど傷んでいない。
おそらく図書館の一角にひっそりと並んでいたのだろう。
裏表紙に貼られた貸出記録にも貸し出し印が三つあるきりだ。

真崎守の漫画は1970年前後に少年マガジンでよく読んだ。
キバの紋章以外はもう覚えていないが、知的でシリアスな内容の作品群
だったように思う。
この僅かな記憶がこの本に手を伸ばさせた。

この本がなかなか読ませる。
飛騨高山の山奥の子供たちの生活、手塚ワールドとの出会いが瑞々しく
描かれている。
漫画雑誌を貸し借りし、手塚の切り開く表現世界に引き込まれ、
次の作品を待ち焦がれる子供達。

真崎の世代は私よりも少し上の世代になるが、この雰囲気はよくわかる。
テレビが普及する前、田舎の子供にとって漫画は大いなる楽しみであると共に、
仲間との繋がりのしるしであり、科学と不可思議の世界を覗かせてくれる
鏡でもあった。



真崎が長じて虫プロに務めていたこと、
著者の名前がマサキマモルではなくマサキモリであることなど、
この本で始めて知った。

この本は手塚の死から1年後に、真崎からのオマージュ、レクエイムとして書かれている。
第二巻の出版も予定されていたらしいが、どうも果たされなかったようだ。