映画 「小川の辺」

 
封切り日に合わせて映画を見てきた。
藤沢周平原作の「小川の辺」である。

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海坂藩士、戌井朔之助は藩政を批判して脱藩した佐久間森衛を討てとの藩命を受ける。
佐久間は剣友であり、妹田鶴の夫でもある。
佐久間に理があることも承知している朔之助は藩命を固辞するが、
戌井家存続のために結局引き受ける。

夫と一緒に出奔した田鶴は女ながら剣の名手。
田鶴は兄に剣を向けてくるのだろうか。

朔之助は家臣の新蔵を伴って、江戸の先、行徳をめざす。
山形から奥羽山脈を越えて、川を下る。

映画は美しい自然を丁寧に描いている。
しかし、残念なことに人を描けていない。

東紀之演じる朔之助は、端正で品のある武士に描かれているが、
藤沢作品に漂う抑制された悲しみ、友や妹と命のやりとりをする苦しみが
伝わってこない。

菊地凛子の田鶴は気が強いだけで、品がない。
片山愛之助演じる佐久間は前半では気骨のある武士として描かれるが、
クライマックスの朔之助との対決場面では単なる兵法者扱いである。

監督は何を描きたかったのであろうか。
毅然として藩命を全うする武士の姿か、
はたまた東と片山の剣戟の美しさか。

この映画の脚本はやはり山田洋次に書いてほしかった。