妖精が舞い下りる夜(アンジェリーナ 君が忘れた靴 その2)

図書館で小川洋子のエッセイ集「妖精が舞い下りる夜」(93年)をパラパラ見ていたら、
次のような文章があった。少し長いけど引用してみる。
「ふと流れてきた音楽(中略)の中に、以前読んだ小説のシーンがオーバーラップするということは、
その小説が確かに何かを、読み手に残したということだろう。
反対に、小説を読んでいて自然に音楽が聞こえてきたり、絵や色が浮かんできたりするというのも
素敵な体験だ。わたしもそういう小説を(中略)書きたいと思う」
そんな思いから佐野元春の曲をイメージした短編小説を書いた、と述べている。

先日「アンジェリーナ 君が忘れた靴」で経験したことを書いた。
まさに小川の狙いどおりだったわけだ。
音楽と小説が共鳴しあう、ありそうでなかなか体験できないことを、
実際に実現してみせる。
小川は才人だ。

このエッセイは芥川賞をもらった91年の前後に書かれたもの。
古い本だが小川の小説に対する姿勢や方法論がよく分かる。