林順信 「東京・市電と街並み」

 

この写真集は明治から昭和にかけての都電(市電)のある風景を
まとめた本で、なかなかおもしろい。

錦絵や当時の切符もたくさん紹介されているがやはり写真がおもしろい。

次の写真は都電の早稲田駅である。

イメージ 1

1967年とある。
電車に32という番号が見えるので、三ノ輪に向かう荒川線(32系統)である。

手前のおばさんたちはまだ和服姿だ。
中の一人は大きく膨らんだ旅行かばんを下げている。
息子の下宿にでも向かうのだろうか。


写真の左奥には何かを待っているような男性と女性の姿が小さく写っている。
早稲田駅厩橋に向かう39系統の始発駅でもあったので、
その電車を待っているのかもしれない。


1967年と言うと、東京の再開発が急激に進んだ東京オリンピックの数年後だが、
まだこのあたりには高層ビルはたっていない。
右側の木造の建物には木村医院という看板が出ている。
戦後のバラック建築のようだがどうだろうか。


線路の両側はすぐ石畳の歩道になっており、車道はない。
道路が拡幅され新目白通りとして整備されたのは1960年代末とのことなので、
この写真の数年後のことだ。



Google street viewで現在の姿を見てみよう。

イメージ 2

駅の両側には新目白通りの上りと下りが走り、ビルが並んでいる。

半世紀に近い時間差があるとはいえ、街並みはすっかり変わり、
都電の駅がなければ同じ場所とは思えない。