石神井へ

 
夜が明け、惨状が明らかになりつつある。
多くの方が亡くなったり、行方不明になっている。

昨日は東京駅近くの古い頑丈なビルの中にいた。
周囲に人的な被害はなかったが、
事務所の壁に大きなひびが入った。

古い家屋に住んでいる家族が心配になって
家に電話をしてもつながらない。
メールがなんとか届き、一応無事を確認した。

早めに仕事を切り上げ、帰宅することにした。
しかし交通はストップし、帰宅の手段がなくなった。
タクシーもつかまらない。
バスは動いているらしいが、道は大渋滞で
全く動いていない。

やむなく都心から石神井まで歩くことにした。
巣鴨方面を目指す知人を本郷三丁目辺りまで送り、
そのあと、後楽園、江戸川橋に周り目白台にあがって
目白通りを西に向かって歩く。
このあたりは以前に自転車通勤で通いなれた道なので、
夜でも迷うようなことはない。

しかし携帯電話は全くつながらない。
家の様子、実家の両親や嫁いでいった子供達、親戚の安否が
分からない。

お腹が減ってコンビニに入るが、どこも混雑している。
おにぎりや弁当は売り切れて、菓子類しかない残っていない。
ポッキーを買って、かじりながら歩く。

新青梅街道、早稲田通りを歩いてやっと家に
辿り着いた。
5時過ぎに家を出て、帰り着いたのが10時頃。
距離にしたら15~20kmだからたいした距離ではないが、
昨日は寒かったので、最後のほうでは足が棒のように硬直して、
つらかった。


家族は無事で、モノが壊れたりということもなかった。

実家には11時過ぎに電話がつながった。
電話に出た母によると、横浜駅近くに
買い物に行った父が戻っていないという。
携帯に電話をしても出ない。

慎重な父のことだから大丈夫だろうと、寝ることにした。
寝床に入ると、余震が断続的に起きていることが分かる。

うつらうつらしながら一晩をあかし、今朝6時過ぎに電話をした。
始発で帰ってきたよという元気な声が聞こえた。
ホテルのロビーで一晩を過ごしたという。

幸い家族は無事だったが、北関東にある我が家はどうなっているだろう。
東北に住んでいる親戚や友人は無事でいるだろうか。

そして私にできることがなにかあるだろうか。