広重名所江戸百景 深川編(68、69、106、107景)

 
23日の広重ツアーは地下鉄東西線門前仲町駅を起点に、東に向かって
広重の足跡をたどった。

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最初に向かったのは富岡八幡西隣り、現在の深川公園の付近である。
広重はここで第68景「深川八まん山開き」を描いている。
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富岡八幡の別当寺であった永代寺の庭園である。
年に一度の庭園開放を山開きと称した。
開花時期の異なる桜とつつじが描かれているが、これは日本画に特有の
「異時同図法」という手法とのこと。

明治になって永代寺は廃寺となり、池も戦時中に埋め立てられた。
(少し離れた場所に永代寺というお寺があるが、これは別物。
元の永代寺の末寺が名前を引き継いだ)


広重は富岡八幡の東隣でも第69景「深川三十三間堂」を描いている。
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もちろんこの三十三間堂は京都のそれを模して造られたものである。
建物の長さは66間あり、柱が34本あった(柱の隙間が33)。
ここでは数矢(一昼夜で何本の矢を射ることができるかを競う)が盛んに行われた。
三十三間堂も明治になって撤去されたが、近くの学校の名前と校章にその名残がある。
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永代通り沿いにさらに東に進むと、左手は旧木場地区である。
広重はここで傑作「第106景 深川木場」をものにしている。
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深々と降る雪、真っすぐ空に突き出した材木、岸辺のゆるやかな屈曲、
川面で働く職人、それらが絵に静かなリズムを生みだし、見飽きることがない。

この絵の場所ははっきり特定されていないが、道路と掘割の形、橋の場所などを勘案すると、地下鉄木場駅の前あたりから北の方角を描いたと思われる。


広重は深川でもう一枚の傑作「第107景 深川洲崎十万坪」を描いている。
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絵の双耳峯は筑波山、北の方角を望む鳥瞰図である。
材木が林立しているのが木場、その手前に見える家並は洲崎弁天付近であろう。
洲崎弁天は106景のビューポイント想定地のすぐ近くである。
木場の右側(東)の海岸一帯が一ツ橋十万坪と称された埋め立て地である。

106景、107景は共に冬の季節を描いており、色調も良く似ている。
広重は106景を描きながら、107景の構想を練ったのではないか。