75年前の古写真で見る井草の桜 (2)

師岡さんの写真(昭和10年)をもう一度見てみよう。
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細かく見ると、次のようなことが分かる。
1) 桜並木の向こう側、画面の左右に大きな屋敷林が見える。左の屋敷林には大きなケヤキも見えている。
2)左の屋敷林は桜並木のすぐ近くにある。右の屋敷林も並木に近い場所にあるようだ。
3)左右の屋敷林の間は開けている。畑があるのだろう。
4) 桜並木の手前には左右に畑が続いていて、視野内に屋敷林のようなものはない。
5) 撮影者は桜並木を斜め右手に見る角度から撮影している。


屋敷林は、昭和23年の航空写真の中にもたくさん見える。
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屋敷林が一人前になるのには長い年月がかかる。13年では無理だ。
航空写真に見える屋敷林は昭和10年にもあったはずだ。
ということは昭和10年の写真の1)~5)の特徴は航空写真の中にも残っている可能性がある。



航空写真の中で、それらしき場所を探してみると、一箇所だけ該当しそうな場所があった。

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下の図はその一部を拡大したもの(高精細画像)。

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青い丸が推定撮影ポイントである。
赤い線は師岡さんが愛用していたライカ標準レンズの画角を示している。
このアングルなら1)~5)の特徴を持つ写真がとれそうだ。
道路の片側には桜並木がはっきり写っている。

他の場所では屋敷林が離れすぎていたり、手前の畑が狭すぎたり、桜の手前に屋敷林が
入ったりで、合致しない。

推定ポイントの住所は下石神井町で、桜の向こう側が井草になる。
この点が少し引っかかるが、井草方面を臨むという意識で説明文に井草と書いたのだろう。


少し時代が下るが、昭和38年の千川用水の風景である。

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道路の左側に千川用水が流れ、それを挟むように桜並木が並んでいる。
師岡さんの写真で農作業をしている麦畑は、用水の左側に広がっていることになる。


古写真散歩にはトリックを解くような楽しみがある。