荒木経惟 「東京慕情」

東京には図書館がたくさんある。
一つの図書館にある写真集の数は限られているが、
自分の住んでいる地区の図書館だけでなく、隣の区や市の図書館も
利用できるので、いろいろな写真集に接することができる。

そんな図書館めぐりで見つけた大好きな写真集がこの本。
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数ある東京もの、下町もの写真集の中で、そこに住む人間の
息遣いを感じさせてくれる数少ない一冊である。

小林信彦の案内で、東京中を歩き回っている。
銀座、佃島、赤坂・青山、原宿、六本木、新宿、四谷、渋谷、
谷中、吉原、浅草、神楽坂、神保町、九段。
1993年から1994年頃のことというから平成の東京の街と人を
写したものだが、昭和の東京といっても通用しそうな姿が
写し取られている。

たいていの舞台は表通りではなく裏通りや横町。
人々は表通りでは見せない生身の表情や自然な姿をさらけ出す。
荒木の主たる関心はその一瞬を切り取ること。

『天が作ってくれるんだよ、場面を。だから、
そのときどれだけ臆せずにシャッターを押せるかが大事なんだよ』

『 「用水桶イイねー」なんてカメラを構えていると横切ってくれるんだよ少女が。
“幸せ”とゆー少女がさ。』
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