「昭和の東京  路上観察者の記録」 路上観察学会

ご存じ路上観察学会、五人組*のトマソン本である。
  *赤瀬川原平藤森照信南伸坊林丈二松田哲夫

22年の活動の集大成のような本である。

第一部は「建築でたどる”昭和の東京“の旅」。
ここに出てくる建物は丹下・黒川流の大建築ではなくて、
長屋、風呂屋、床屋、煙草屋といった庶民派建築で、しかもどこか変、
だけど味があるというものばかりである。

神田小川町で毎日のように目にしている「顔のYシャツ」も出てくる。
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第二部は「街角の匠 装飾の美」として、玄関や軒先、壁をかざっている
装飾品が紹介される。
ここは誰も気づいていない美の発見という趣があり、結構学会っぽい。

漫然と見ていて何かを発見するということはなく、注意深く観察して
初めて見えてくるものがある、それは科学の分野でも街角観察でも
同じなんだと、改めて思う。

第三部は「路上観察 珍品・名品コレクション」。
ここは五人組の得意分野で、遊びの精神が最も発揮される。
たとえば高級住宅地、広尾で次の張り紙を見つける。

 「燃えないゴミは(金)だけです」

これはもちろんゴミ出しは金曜日だけにしてねという張り紙だが、五人組は
広尾の高級住宅のゴミはお金だけと読む。
そして他の街では「燃えないゴミは水だけです」「燃えないゴミは火だけです」も
あるとしゃれのめす。

田端ではニワトリテレビを発見し、新宿では純粋階段を発見する。
これらは知っている人の間では有名、知らない人はまったく想像もつかない、
というたぐいのものであるが、見れば笑えます。

ぜひ一読あれ。

好きです。この本。