公文健太郎 「大地の花 ― ネパール 人々のくらしと祈り」

写真集の記事が多くなっているので、書庫「読書日記」を二つにわけ、
「読書日記」と「写真集三昧」で運用することにしました。

「写真集三昧」に新たに追加する最初の写真集は若き写真家、公文健太郎の「大地の花」です。

イメージ 1

「首都カトマンズから東に30キロの地点に位置する小さな村を訪ねました。
10歳にも満たない小さな少女が大きな水瓶を腰に抱え、水場から続く急な坂道を行き来する。
食事の支度をする母が小さな実を石で丁寧にすりつぶすと、豊かな香りが漂ってくる。年老いた
老婆は土間の古びた柱にもたれかかり、ミルクを延々とかき混ぜバターを作る。生きることが
そんな小さな行為一つ一つの積み重ねによって、丁寧に作られていくものなのだと、ここに
来て僕は教えられました。」

これは公文が写真展のときに寄稿した文章です。
この文章からもわかるように写真家の眼はもっぱらこども、少女、母親、老人に注がれています。
とくに家事の担い手として働き続ける少女の姿、やがて学業をあきらめて親の決めた相手に
嫁いでいく少女の姿、を愛情と哀惜をこめて写し取っています。

タイトルの「大地の花」は、嫁いでいく一人の少女の手紙からとっています。
 「夜空の星より  
  大地の花を私にください
  お金や財産はいりません
  友達の愛があればそれでいいのです
  ありがとう」

農村生活は質素ではあるけれど、人間同士が豊かに繋がり清潔感にあふれています。
アジアモンスーン気候のめぐみの中で、人々は運命に逆らわず大きな輪廻に従って
ゆったりと暮らしているようにもみえます。

(写真家の公式ホームページにいけば、その一端にふれることができます。
  http://www.k-kumon.net/  )