浅田次郎 中原の虹

浅田次郎の三部作、蒼穹の昴、珍妃の井戸、中原の虹をやっと読み終えた。
フーッ。 ホントに長かった。

主要な舞台は清朝の末期から中華民国の創成期まで。

蒼穹の昴」は極貧の農村出身の宦官・李春雲と西太后が物語の中心にあり、
「珍妃の井戸」は光緒帝の妃殺害をめぐる謎解きが主題になっている。

これに対し「中原の虹」では清朝の滅亡をめぐる混沌が描かれる。
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その前半では中国を生まれ変わらせるためにあえて悪役を演ずる西太后の姿が描かれ、
後半には袁世凱孫文張作霖蒋介石といったお馴染みの顔ぶれが登場する。
馬賊出身にして東北三州の支配者、張作霖が長城を超えて中原に攻め入る
ところで物語は終わる。

はっきりいって「中原の虹」の主題は分かりにくい。
あえていうと、混沌から国を救う天命があると信じて戦う男達あるいは女の物語、
志ならずして斃れていく英雄たちの群像劇、といった所だろうか。
ただ途中まで丁寧に描かれている登場人物(たとえば日本で立志して戻った蒋介石
同じく請われて中国に戻った梁文秀、三部作の狂言回しともいうべき李春雲、
ずっと張作霖に密着していた吉永将)が最後にどのような道を歩み始めたか、
それが描かれずに終わってしまっており、中途半端という印象が残る。
作者はこの小説を通じ近代中国の真実を伝えたいと語っているが、そういう面で言うと
張作霖と日本軍部の深いつながりをもっと書いて欲しかった。

抜群のストリーテーラにして腕力家、浅田次郎にしてやや消化不良、
というのが私の感想である。