福島の桜(4/4)

 

他に訪れる人もいない桜の下で、少年たちに会った。

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小学校の5年生か6年生の5人組。
マウンテンバイクに乗ってやってきた。
息をはずませながら、賑やかにおしゃべりをしている。

おしゃべりに誘われて話しかけた。

どこから来たの?

  この近くだよ。
  桜が咲いたって聞いたから。
  おじさんたちは?

東京。
滝桜だとか、このあたりの桜を見てまわっているんだよ。

  東京かー、
  すげー。

すごくはないよ。
自動車で3時間で来るんだから。

  そっかー。
  東京にいってみたいな。

東京のどこ?

  スカイツリーでしょ、それからディズニーランド、・・・

でもここいい所じゃないの。
景色もいいし。

  まあね。
  じゃ、おれたち別の桜、見に行くから。


少年たちはマンテンバイクに乗って坂を下り、向うの
丘に消えていった。


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桜が散ると、この丘も向うの丘もすぐに美しい若葉に包まれるはずだ。



近くに止めた車まで歩いて帰る途中、作業用のトラックが何台か
止まっていた。

その脇に看板が立っていて、こう書かれていた。

  「除染作業中」


直径1mほどの黄色いタンク二つに、小さなポンプ、
それを使って家の周りの土を処理している。


その作業を見ているときに、気が付いた。
東京に行ってみたいと言ったもう一つの意味に。
そしてバカなことを言ってしまったことに。

   「ここいい所じゃないの」


この付近の環境に関しては何も知識を持ち合わせていないが、
あの少年たちが安心して暮らせる環境が一日でも早く戻るようにと、
心から願う。