「つばくろ越え」 志水辰夫

 
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シミタツこと志水辰夫の「つばくろ越え」が読ませる。
「つばくろ越え」には飛脚問屋「蓬莱屋」シリーズとして、
表題作のほか、「出直し街道」、「長い道草」「彼岸の旅」の
4話が収められている。

荷物は普通、継ぎ飛脚(問屋間をリレー式に送る)によって届けられていたが、
蓬莱屋は通し飛脚(一人の飛脚が相手先に直接届ける)もやっている。
表に出したくない、出せない荷物を客からあずかり、
関所をさけ、けわしい峠道を超えて荷物を運ぶ。

第一話に登場するつばくろ越えは越後と会津の国境、御神楽岳に
実在する

御覧の通りの急峻な尾根を越える。
飛脚人仙蔵は日光西街道、つばくろ、阿賀野川沿いを通って、新潟湊と江戸を行き来する。

第2話の舞台は越前の九頭竜川沿い、第3話は新潟の松代。松之山の近辺。
いままでの時代小説にはあまり登場しない舞台設定が新鮮だ。

毎回入れ替わる主人公は旅の先々で面倒に巻き込まれ、見過ごすことができずに走り回る。
商売道具でもある足を使い、藪影に潜んで女房や子供のことを思いながら、
敵の目をあざむく。

股旅ものの範疇に入るのだろうが、いたずらに人情や活劇に走らず、
テンポ良く話が進む。
良質のエンターテイメントである。

志水辰夫のHPによれば、第2弾が今年の秋に出るとのこと。
楽しみである。